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退職金で一括購入はNG?

定年後にマンション購入しても大丈夫? 留意すべき4つのポイントをお金のプロが教えます!

牧野寿和牧野寿和

2017/10/27

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定年後のマンション購入は危険? 賃貸にもリスクはある?


(c) moonrise – Fotolia

定年退職を機に、郊外の一戸建てから駅近のマンションに住み替えたいという人が、資金計画などの相談にいらっしゃることがあります。また、現在は賃貸住宅に住んでいるけれども、定年退職後にマンションを購入しても大丈夫かという相談をされる人もいらっしゃいます。

マイホームの住み替えであればともかく、定年退職後にマイホームを購入するとなると、不安を感じる人も数なくないことでしょう。ですが、定年退職後に賃貸住宅に住み続けることにもリスクがあります。

定年退職後に賃貸住宅に住むとなると、最も問題となるのは、「入居できるかどうか」ということでしょう。

ご存知かもしれませんが、実は、高齢の人の入居を受け入れる民間の賃貸住宅は少ないのです。私の知る限りでは、だいたい65歳を超えると、入居審査を通る可能性は大きく減ってしまいます。

大家さんが年齢の高い人に部屋を貸すことを躊躇するのは、年金暮らしで収入が少ないことから家賃の滞納を心配したり、孤独死や火の取扱いといった集合住宅ならではのトラブルを警戒したりというのが、その理由です。この傾向は今後も続いていくでしょう。

現在、賃貸住宅に住んでいる人でも、もし、定年後に何らかの理由で引越しをする場合、新たに賃貸住宅に入居できるかどうかという点が問題になります。

また、何らかの理由で家賃を払い続けることができなくなれば、住むところを失うことにもなってしまいます。

老後の安心を考えるのであれば、現役中にしっかりと準備をしておき、定年退職後はマイホームで暮らすことが何よりと言えるのではないでしょうか。

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定年後の中古マンションで留意すべき4つのポイントとは?

定年後の暮らしを考えれば、私は利便性の高いマンションをおすすめします。特に、詳しくは後述しますが、立地や価格で優位性のある中古マンションがおすすめと言えるでしょう。

それでは、定年後にマンションを購入する場合、どんな点に注意したらいいのでしょうか。ここでは、4つのポイントにしぼってご紹介していきます。

<ポイント1>中古マンション、新築マンション、どちらがおすすめ?

まず、中古マンションと新築マンションのどちらがおすすめかという点ですが、それぞれの違いを比較してみましょう。


(図表1)中古マンションと新築マンションを比較すると?

中古マンションの場合は、購入時にすでに管理組合もありますし、住んでいる人の特色もわかります。購入する部屋や共用部分のリフォーム履歴の内容も記録されていているなど購入の判断材料が豊富です。

また、マンションを建てるには広い敷地が必要になりますが、利便性の高い立地にはすでにマンションが建っていることが多く、立地面で優位性があるのは中古マンションと言えるでしょう。

このように考えると、新築マンションと中古マンションであれば、私は中古マンションの購入をおすすめします。

一方、一戸建てとマンションのどちらがいいのか迷う人もいらっしゃいます。

一戸建て住宅にはマンションのように共用部分がありませんので、持ち物はすべて自分のもので、自分で維持管理をしなければなりません。また、管理費や修繕積立金などの負担はありませんが、固定資産税などの負担はあります。

利便性やセキュリティー面での安心、維持管理の労力を考えれば、やはりマンションをおすすめしたいところです。

ただ、定年まで集合住宅で生活をしていた人はともかく、長年、一戸建てで生活をしていてマンションに引っ越した人は、セキュリティーの面は向上しても、「土いじりができない」「周りの部屋からの騒音が気になる」「近所付き合いになじめない」といった理由から、購入したマンションを賃貸に出して、自分たちはまた一戸建て住宅に引っ越すこともあるようです。

一戸建てに住んでいた人は、マンションという集合住宅で生活に不便を感じないかどうか、慎重に検討することをおすすめします。

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<ポイント2>一括購入すべき? 住宅ローンを組むべき?


(c) polkadot – Fotolia

定年後に住宅ローンを組むのは不安という人も多いと思います。定年後のマンション購入は一括購入がいいのか、それとも住宅ローンを組むのがいいのか、どちらでしょうか。

その議論の前に、予算全体の話として、中古マンションを購入する場合には、物件価格や修繕積立金とは別に、部屋のリフォーム費用を念頭に入れておくことが必要と考えておいてください。築浅物件であれば、リフォームは不要かもしれませんが、基本的にはリフォーム費用を含んだ金額で資金計画を考えることをおすすめします。

一括購入をする場合、退職一時金を使うことはおすすめいたしません。退職一時金は老後の生活費となるお金ですから、それを使っても問題ないのは、退職一時金を住宅購入資金に充ててしまっても、十分に老後の生活をしていける場合に限定されると考えるべきでしょう。

一括購入をお考えであれば、現役中に現金の準備をしておく、もしくは退職後も一定の収入が見込めるなど、一括でそれだけの現金を支払っても老後の生活に支障がないか確認することが必要です。

一方、住宅ローンを組む場合は、年齢制限があることを忘れてはいけません。金融機関によって違いますが、一般的には住宅ローンの契約ができるのは、65歳から69歳程度までと決められています。また完済の時期も75歳から80歳と定められています。この期間で返済しても、生活資金が枯渇しないかの検証が必要です。

定年後は、一般的には現役のときより収入が減ります。主な収入となる公的年金、人によっては企業年金や個人年金の受給額を勘案して、老後の資金計画をしっかりと立てておきましょう。

また、一括購入する場合でも住宅ローンを組む場合でも、それまで住んでいた住宅を売却する、もしくは賃貸に出すなどして有効活用してください。

そして、何よりも現役中に購入のための貯蓄をするなど、しっかりと準備をした上で購入方法を決めなくてはなりません。

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次ページ ▶︎ | <ポイント3>住宅ローンを組む場合の注意点は?

<ポイント3>住宅ローンを組む場合の注意点は?

前述したように一般的には住宅ローンの契約ができるのは65歳から69歳程度まで、完済も75歳から80歳までと決められています。その期間に完済できるようなローンの組み方をしなければなりません。

たとえば、65歳定年の人が、1500万円を返済期間15年、全期間固定金利型、年利1.5%で融資を受けたとします。その場合、毎月の返済額は8万9774円、総返済額は約1615万円となります。また、その他にも借入れの諸経費や、毎年の固定資産税、毎月支払う修繕積立金などもいります。

繰り返しになりますが、これだけの支出をして家計が成り立つかを、まず検証することが必要です。

住宅ローンの審査では、借りる人の収入などの「人的要件」と、購入物件が担保として価値があるかの「物的要件」がチェックされます。

住宅ローン審査を通るためには、家計状況に見合った金額を申し込むべきことはもちろんですが、審査の物的要件をクリアするために、物件価格に見合った十分な資産価値のある物件を選ぶことが大切です。

なお、中古マンションを購入した場合でも、所得税や住民税の一部が戻ってくる住宅ローン減税は適用されますが、

・自己居住用の床面積(登記簿面積)が50m2以上の住宅

・マンション等耐火建築物は25年以内に建築されたものまたは、一定の耐震基準、耐震基準適合証明書、住宅性能評価書の耐震等級1以上、既存住宅売買瑕疵(かし)担保責任保険契約が締結されている

などの要件に適合することが必要です。

物件選びでは、住宅ローン控除の要件を満たしているかどうかも、必ず確認しましょう。

次ページ ▶︎ | <ポイント4>選ぶべき立地は? 

<ポイント4>選ぶべき立地は?

中古マンションに限らず、不動産を購入する場合は、物件価格が下がりにくい資産価値のある物件を購入することが理想です。「マンションは立地で選ぶ」とよく言いますが、立地が資産価値に与える影響は大きいものです。

選ぶべき立地についての具体的なポイントは、

・物件の周りは静かでも、歩いて10分程度のところに大型のスーパーなど、また数分のところにはコンビニがあるなど生活環境が整っている

・徒歩8分圏内に鉄道の駅があるなど交通の便がいい

・近隣にホームドクターとなってくれそうな病院がある

・犯罪率が低く、「治安がいい」と言われている地域

・地盤が強固で地震の影響が比較的低い

といったところです。

繰り返しになりますが、立地は資産価値に与える影響が大きいので、慎重に検討することをおすすめします。

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持ち家からの住み替えであっても、賃貸住宅からの住み替えであっても、定年後にマンションを購入することは決して不可能なことではありません。

ですが、たとえば「退職一時金が入ったから」といったような理由で、成り行きや勢いに任せてマンションを購入してしまったらどうでしょうか。

購入後、しばらくの間は、新たな住まいで老後の生活を満喫できるかもしれません。しかし、蓄えが枯渇し始めたら、もはや現役時代のような収入はありませんし、働く先を探すのもむずかしいことでしょう。そうばれば、生活がどうなっていくかは目に見えています。

そんなことにならないように、定年後のマンション購入を考えているのであれば、一括購入でも住宅ローンを組むにしろ、現役中にその準備をしておくことが何よりも大切といえるでしょう。

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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